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2012年01月11日

彼らはこの島を守ろうとした。自分の為ではなく未来の島民の為に

私が豊島と初めて出会ったのは、2007年の9月12日のこと。

シブヤ大学の郊外学習プログラムに新しく「瀬戸内の島を教室にして、島の人を先生にする授業」を作ることになり、かねてよりシブヤ大学の理事と親交のあった三井文博さん(現・NPO法アーキペラゴ理事長)に相談がありました。

その三井さんのお誘いによって、大学の本拠地である東京・渋谷と島々の間を結ぶ拠点として母港としての高松でコーディネーターをさせていただくことになり、試作的授業(10月27日・28日実施)の内容を決めるため豊島に初上陸したのでした。

この時のシブヤ大学多島海ツーリズムの教室は、小豆島・男木島・直島、そして豊島。コーディネーターとしてツアー作成に臨むことになったのは、私を含めて4人でした。

ここでシブ大の人に「栗生さんはどの島がいいですか?」と(きっと歳の順に)聞かれて、まり考える時間もなさそうだったので、とっさに「行ったことないのが豊島だけです。この際私も豊島を勉強したいので、豊島にします」と答えたのです。

そこからが、私と豊島のご縁の始まりでした(今思えば)。

この日は、チャーター船の手配から、現地での産廃現場視察の予約などを全部片山明子さんがやってくれました。
不法投棄現場のガイドをできる豊島住民は現在5人在籍しているということですが、片山さんが引いてくれた「砂川さんカード」が、後に人生の師となることを考えると、三井さんと片山明子さんは豊島や砂川さんと私を引き合わせてくれた恩人であります。



9月12日、チャーター船が豊島家浦港着岸、上陸。

このときに我々を、仏様のような笑顔で迎えてくれたのが、その砂川三男さん(元廃棄物豊島住民会議元議長)でした。

「よお、来てくれましたな」「年寄りのしょうもない話を、聞きにきてくれてありがとう」

暖かく謙虚な言葉がはさまれながら、不法投棄現場の「心の資料館」というところで、砂川さんの話は始まりました。

話が進むにつれて、それまでに自分の中にあったと思われる、豊島への偏見、生半可な知識がどんどん剥がれ落ちて、涙に変わっていきました。

不法投棄開始が1970年代。1990年に兵庫県警によって業者が摘発されるまで、どうしてあんなになるまでほっといたのか
という質問が、豊島のことをあまり知らない人から聞こえることがありますが、
豊島住民は、不法投棄が始まった直後から、県庁への通報・相談、運動を始めていたのでした。

住民に落ち度はなかった。(あったとしたら、行政機関をお上=悪いようにはしないはず、と信じた「人の好さ」だけ)


本来なら、監督行政を行って、不法投棄を止めなければならない県庁職員が、不法投棄を続けたい業者のいいなりになり、住民運動を抑えるために偽りの「安全白書」まで作っていた事実。


2000年6月に公害調停が成立し、当時の知事が、末期のガンと戦いながら住民運動の先頭に立っていた安岐登志一議長と握手をし、涙を流しながら住民に謝罪したその翌年に、問題をここまで巨大化させた県庁担当者の上司にあたる人が、環境省から表彰されていたという事実。(47都道府県の知事が、その年の表彰対象者を推薦する仕組みだそうです)

中坊公平弁護士との出会い、弁護士が訴訟の費用のうち、1000万円という身銭を切ってまで、豊島を助けようとしてくれたということ。

県庁の職員や香川県民に、「今、おなじ香川県の中で、こんなことが起こっている」ということを知ってもらうために、島の年配者(平均年齢70歳)が決意した、「県庁前のたちっぱなし抗議」のこと。

砂川さんたちで結成されていた「たちっぱなし年寄隊」は、晩秋から翌年の3月くらいまでの半年間の間、まだ高速艇がなかったため、宇野や土庄でフェリーを乗り継ぎ、2時間かけて高松に上陸し、県庁の始業時間の8時半から午後5時半まで、5人交代で、寒風ふきすさぶ県庁前の道路(中には入れてもらえなかった)に毎日に立ち、道行く人や県庁職員に「こんなことが起こっています」と書いたチラシを渡していたそうです。

5人が凍えながら立っているところに、老人車を押したおばあさんが近寄ってきて、買ったばかりの暖かい甘酒の缶を5つもって近づき一人一人に渡されたときに、「わしら、この甘酒は、よー飲まんの。ありがたくて。。」と誰も缶を開けずに、懐に入れて持って帰った話。


心の資料館に貼られた500人余の調停の原告人名簿、そしてところどころ、その名前の横につけられた黒いリボン。。


etc..


あのとき、豊島の人たちがわが身を顧みずに立ち上がっていなかったら、今、瀬戸内海は、とんでもないことになっていたと想像ができる話。





1時間半に亘る砂川さんの話はあっとう間に終わったと思えるくらい内容が濃くて、熱くて、悲しくて、怒りが込み上げて、そしていろいろな感情で体が震えました。


そして、次の瞬間、豊島事件に興味を持ったことがなかった自分は、きっと県庁での砂川さん達のたちっぱなしをしらんぷりして通りすぎてた県民の一人だったに違いないと思い、

恥ずかしくなったのです。


砂川さんは、当時すでに御年80歳になっておられたのに、ものすごい記憶力と高い言語能力に加えて、その場その場で臨機応変に対応できる柔軟をも持ち合わせておられる、凄い方です。

そのうえ、お人柄は、まるで、冬の陽だまりのような暖かい人。


それからというもの、私は、理由をつけては豊島に渡り、砂川さんの顔を見にいくようになりました。

そして、自分は、まずは香川県に住んでいる人で、この事件を、闘った当事者の口から聞く・知る人を一人でも増やす努力をしよう、といつしか決意していました。

その後、いろいろなことをして(たとえば、こんなツアー、たとえばこんなことをして現在に至りますが、いまは、毎月第4日曜日を、「砂川三男元議長の話を豊島で聴いてもらう日」と定め、これを「豊島ゼミ」と称して、ほそぼそとツアーを続けています。


今月は、1月22日(日)に開催します。
    参加費は3000円
      ※現地徴収・内訳2000円はバス・資料ガイド代として住民会議へ、1000円は昼食代。

日程はこちらです。

集合10時20分 豊島家浦港桟橋付近
   ~12時   砂川さんのお話(不法投棄現場「心の資料館』中心
   12時半~14時 昼食(豊島片山邸にて)
         残りの時間 自由時間(甲生地区の散歩、泉屋でワイン、お昼寝、読書、茶室でお茶、首なし地蔵お参りetc)

   14時50分    豊島片山邸出発
   15時      家浦港にて解散

  ※豊島高松の往復は、この船が便利です。
  ※土庄や宇野経由で来ることもできます。詳細は、高松在住豊島出身のSEであるペンペンさん(毎週末に豊島に帰って一人暮らしのお母さんのために松の剪定や動物性蛋白質の調達を行う孝行息子)作のこの表をご参考にどうぞ。



様々な人生経験を積んだ年配者は、社会の宝ものだと思っています。
砂川さんに限らず。

順番からいえば先に旅立つことになるこの人たちの話を、直接、生で聴き、どんどん記録して、記憶して、人生に書き込んでいくということを、今年は、とてもやりたいと思っています。


豊島ゼミは、このなかの一つの企画です。


お申し込みは、栗生(電話090-4336-3104)かメールまで、このブログへのコメントでもtwitter でもFBでもなんでも。どなんことしてでも連絡ください。


一人でも多くの方のご参加を、お待ちしています。


彼らはこの島を守ろうとした。自分の為ではなく未来の島民の為に



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Posted by マロンアルファー at 10:56│Comments(3)豊島
この記事へのコメント
るいままさんのところで2度程お会いしたMIAOWです。友人を連れて豊島に渡り思っています。お勉強もしたいし、豊島美術館にも行きたいし、よくばりな私たちですが、両方可能でしょうか。メールのリンクがうまくつながらなかったので、コメント欄にて参加希望表明させていただきました。
Posted by MIAOW at 2012年02月02日 23:49
るいままさんのところで2度程お会いしたMIAOWです。友人を連れて豊島に行きたいと思って。お勉強もしたいし、豊島美術館にも行きたいという私たちですが参加可能でしょうか?メールのリンクがうまくつながらなかったので、コメント欄にて参加希望表明させていただきました。
Posted by MIAOW at 2012年02月02日 23:53
MIAOWさま

参加表明ありがとうございます。
嬉しいです。

今月は、26日実施です。
スケジュール的には、ランチの後は自由行動ですので、豊島美術館にも行っていただけますよ!

連絡先:090-4336-3104 ←こちらまで是非お電話ください!
Posted by マロンアルファーマロンアルファー at 2012年02月03日 11:03
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