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2011年03月01日

團司さん、ありがとうございました。

江戸時代から300年続く文化(肥土山農村歌舞伎)を生涯かけて守り、後継者を育て続けた肥土山農村歌舞伎保存会会長 三木團司さんが、急逝されました。


享年65歳。



私が三木さんと初めて出会ったのは、2007年の5月でした。

その年の5月3日に、生まれて初めて、仲間たちと肥土山農村歌舞伎の舞台を泊りがけで見に行ったことがきっかけです。

歌舞伎、能、オペラ、狂言、コンサート、ライブと、舞台芸術を鑑賞するときは、飲食物持込禁止の会場で、お行儀よく座って鑑賞するというスタイルが主流の環境に慣れていた自分にとって、肥土山での半日は衝撃的でした。
http://kappadoujou.ashita-sanuki.jp/e9332.html

5月の気持ちのいい日差しの下、午後3時すぎから夜9時頃まで、お母さん方が早朝から起きて作ったワリゴ弁当、ワインや日本酒を戴きながら、桟敷に座って足を伸ばして過ごす時間。子どもからおじいさんまでその年の当番の肥土山の人達が何ヶ月もかけて練習した芝居を3演目も4演目も、溢れる緑に包まれながら見る、、という時間の流れ方、この素晴らしさにショックを受けてしまったのです。
http://kappadoujou.ashita-sanuki.jp/e121099.html

肥土山農村歌舞伎は、現存している農村歌舞伎(全国的には地芝居というそうです)の中でも、発祥したときと同じ「役者、奏者、化粧方、道具方、等のすべてを土地の人がこなしている」という非常に貴重なものだそうです。

「ゆるぎない肥土山地区の自治力と誇り」が、そこには今もずっと湛えられています。
http://kappadoujou.ashita-sanuki.jp/e25505.html

5月3日にこんな素晴らしい「芸能の鑑賞法」を経験した直後から、その頃仕事をさせてもらっていた「四国村の農村歌舞伎舞台」に、肥土山の方達に来てもらって芝居をしてもらえたらどんなに素敵だろうという「マロンの妄想」が始まりました。

お弁当とお酒を飲みながらあの屋島の山麓で、役者と客がゆるりと仕切られた空気の中でゆっくり流れる時間を共有する、そんな時間を作ってみたい、と思えば思うほどいてもたってもいられなくなって、気がついたら、土庄町の役場の電話番号を調べて、電話をしていました。

「肥土山農村歌舞伎の保存会の会長さんにお願いしたいことがあるので、電話番号を教えてほしい」と、正面窓口からお願いを始めました。

そして、三木さんに初電話。

「私は決して怪しいものではありません。お願いがあってお電話しました。」という怪しい切り出し方。

かくかくしかじかで、あの芝居をすべてじゃなくていいから、四国村でやってもらえないでしょうか。
できれば、今年の秋くらいに。。来年の春でもいいです。

どこの馬の骨ともわからない私の突然のこんな不躾なお願いに対しても、あくまでも優しく穏やかなう三木さんのお返事はこうでした。

実は、少し昔に、四国村には公演に呼んでもらっていた時代があったのですが、四国村に入村したお客様が無料で歌舞伎も鑑賞できるしくみだったためか、偶然通りがかった人が座っては流れ、座っては流れるのが辛かった。特に、一生懸命に化粧をして何ヶ月も演技の練習をして張り切って来ている子ども達がかわいそうだった。なので、公演は3年くらいで一旦中止させてもらって今に至るんですよ。実現はかなり困難な話だとは思います。どちらにしても、一度はお目にかかってみましょう。

ということで、初対面。場所は、三木さんの会社もある高松側のumieでした。

保存会会長というと、めがねをかけたお腹の丸いおじいさん、というイメージがあったのですが、初めておめにかかった三木さんは、ロマンスグレーで、背が高くて、逆三角形で、男前で、笑顔がまぶしいすごくかっこいいおじさまでした。

三木さんのダンディさに一瞬怯みつつも私は、肥土山農村歌舞伎四国村公演実現にむけて、がんばって口説き始めました。

私と一緒にやってくれたら、先日お電話でお聞きしたような「お客さんが座っては流れていく」ようなことには絶対させません。約束します。

芝居にちゃんとお金を払って見に来てもらえる、見たい人だけが席に座る企画にします。その人たちから集まったお金だけで、すべての経費がまかなえるようにしましょう。

昨日計算してみたら、お電話で聞いた諸経費に印刷費や想定しえるかぎりの支出を加えた合計が61万円。これらを、わたし(ボーセジュール)、保存会、四国村で、3分の1ずつリスクを背負ってやりませんか?チケットが1枚も売れなければ、それぞれ20万円ずつの出費です。チケットが2500円として、250人の人が来てくれたらプラマイ0、それ以上来てくれたら、今度はその利益を3分の1ずつ分けましょう。

と、提案しました。




今考えたら、実際に大道具から小道具まで全部持ってきてもらって、お芝居をしてもらう方にこんなあつかましい提案もないもんだと気づきます。しかし、三木さんは、何度かの理事会や役員会での相談ののち、「わかりました。あなたの情熱に負けました。やってみましょう。」というお返事を下さったのです。

開催決定が年明け。開催予定は5月10日に決定しました。正味3ヶ月の準備期間が、ありとあらゆる方の協力をどんどん戴きながら、駆け抜けていきました。

金比羅歌舞伎の金丸座にチラシを配りに行ったり、三越友の会の会報に広告を載せてもらったり、全日空ホテルクレメントのウェブに掲載してもらったり、三木さんによる歌舞伎の解説を古民家のいろりの周りでお茶を飲みながら聞くという企画をまちかど漫遊帖の春バージョンににねじこませてもらったり、中條文化振興財団に全面的なご協力で、当日四国村内の久米邸と、異人館で素敵なお茶会を開催してもらい、中條財団からそのセット券もたくさん売ってもらったり、、
http://kappadoujou.ashita-sanuki.jp/e13440.html

そんなこんなで当日を迎えました。



しかし、お天気は朝から雨。

「止んでくれ」と念じながら、三木さん率いる肥土山の人たちを乗せたバスを迎えました。

彼らがバスから降りた途端に感じた「すごく、善で、明るくて、頼もしい、陽気な空気」を私は忘れません。「雨が降っているけど、今日は絶対いい日になる!」と確信したのでした。


雨が降るかもしれない、ということで、三木さんは大工さんを連れて前日に四国村に花道を建設しにきてくれました。また、当日はPAから提灯から、大道具、小道具、すべてをその担当の方とともにつれてきてくれました。

当日の演目「義経千本桜つるべ鮓屋の段」のクライマックスの時には、雨足がもっとも強まりました。しかし、客席と舞台の一体感のようなものが生まれて、一種異様な空気が漂いました。

あとで三木さんから「雨のお陰?かな、役者の集中力とアドリブの効きが凄かった。楽しかった!」と言っていただきました。

(が、雨対策を甘く考えていた主催者としての課題は、四国村でやろうと言い出した自分の責任として、今も悔いが残っています。)

チケットは当日券も売れて、収支は、6000円の黒字、ぎりぎりセーフでした。でも、この黒字は、ほとんど無償で何日も動いてくれた三木さんや肥土山の人たち、関係してくれた本当にたくさんの人たちのお陰でできたものだと思っています。。


このときから、私は勝手に三木さんのことを、ともに汗してくれた仲間だと(年下のくせに)だと考え、恩人だと仰ぎつきまとうことにしました。

ある日、私のブログを読んでくれた三木さんが、「壇ノ浦の草刈、大変そうやから、手伝いに行ってあげましょう。草刈機は、軽トラに積んでこちらから持っていくので心配ご無用。朝一の船で行くので、道先案内よろしく」というメールが届きました。

計画性のないまま5反の要草刈田とともに借りていた壇ノ浦の家(一応事務所)の草がぼうぼうで、すでに手がつけられない状態で途方に暮れていたことを見かねた三木さんが、なんと小豆島から軽トラでレスキューに来てくれたのでした。こんな人がいるでしょうか。



またあるときは、「今日は高松でいますか?」と電話があり、「いますよ」と返事すると、「ちょっとお渡ししたいものがあるから」と言われ、受け取りにいくと渡された手提げ袋の中には「暑さ厳しき折、一杯やってください」と手書きの付箋がはりつけられた、冷えたデザートワインが保冷パックと一緒に入っていたこともありました。無類の酒好きだということがばれていたのでした。


2009年は、中條財団主催のあ・うんの数寄大茶会では、ゴッドマザーの至上命令で、私は肥土山のワリゴ弁当を点心として提供する席を交渉段階から担当することになりました。もちろん三木さんに泣きつき、肥土山のお母さん方にワリゴ弁当を作っていただくことになりました。青空の下のテーブルセッティングや接客にこまめに動いてくださったのはなんと三木さんを始めとした男衆(役者さん含む)です。農村舞台では、舞と津軽三味線、肥土山は、お天気にも恵まれた素晴らしい点心席を多くの人にプレゼントしてくれたのでした。

2010年から自分が関わっているNPO法人が借りることになった豊島の片山邸の、シンボルともいえる井戸の復活には、いろいろな試行錯誤の末、予算にも縛りがあったため、結局、地質会社のオーナー(よく考えたら思いっきり本職)の三木さんにまた泣きつきました。通常小豆島からトラックごと通って、職人さんにもお願いしたら2~3日はかかる作業を無理やり1日に縮めて作業して、井戸をきれいにしていただきました。予算はおそらく通常の3分の1(ほぼ原価のような)の請求でした。

お陰さまで、今、ことあるごとにその井戸の水を釜で沸かしてお茶を点てています。


これらはほんの一部ですが、こうして書き出してみると、よく、これだけお世話になりっぱなしで平気でいられたな!と。





今年の年明け、アーキペラゴが主催する「島や瀬戸内」へのあれこれを語り明かそうという会に、事務局から三木さんへ案内が送られました。また、2月26日に開催したSIフォーラムの案内は私がお送りしていたこともあり、その欠席の回答がてら、三木さんからメールが来ました。

「相変わらずお元気にご活躍のご様子、寒さも逃げ出したようです。さて、私事ながら、昨年末より体調を壊しまして現在加療中です。せっかくのご案内ですが、開催時期は、まだ病院に隔離中と思われます。従いまして、残念ですが不参加とさせていただきたく、よろしくお願いいたします。」

というお返事でした。

12月末入院でから3月もまだ出られない。。ちょっと長い、、と思って心配になりました、。

メールで「電話していいか」と確認し、電話をかけたら、つとめて元気そうに話されるけれど発声がしんどそうだったので、さらに配になり、

「恥ずかしいからお見舞いはご遠慮したい」、といわれつつ、強引に携帯メールで予告して2月17日にお見舞いに行きました。


病床で三木さんがおっしゃっていたこと。

★ だれかさんのお陰で四国村で芝居やったり、いろんなことをやらされてえらい目にあわされけど(笑)、お陰で、世界が広がった。三井さんとも会えたし、大臣賞も受賞したし、いろいろ世界が広がった。楽しかった。

★ 片山邸、あんな素晴らしいところは、瀬戸内海探しても(もちろん小豆島内)でもない。ほんとうに大事にせないかん。井戸は?水はちゃんといけてる?

★ 役者の大事なことのひとつは、色気です。単に体をこっちむけるだけでなく、上半身をちょと腰でひねるというめりはりをつけるためにも必要なんやけど、なかなかみんなできんなあ。

★ このまま入院が長引いたら5月の歌舞伎ができなくなってしまうので、困る。3月半ばには退院できると思う。あと10年。もうちょっと生きさせてもらわんと困る。




三木さんは前回お目にかかったときより痩せていて、ちょっとしんどそうで、白いひげが生えていたけれど、私の話によく笑ってくれて、三木さんもよく冗談をいって、素敵な奥様や息子さんと娘さんとともに、楽しいひと時を過ごさせてもらいました。時間にして20~30分くらい。

お見舞いから帰ってきてから、だんだんと、いつでもお願いできると思っていた「マロンの潮風radio」で、肥土山農村歌舞伎への想いを話してもらわなければ、、と落ち着かなくなりました。それが、2月21日。

iPodをもって、病院に駆けつけて、現地収録させていただきたいとお願いしたいと何度も思ったけれど、「そんなんあわてんでも、元気になってからでもいいじゃないですか」といわれそうで、そしたらどう返していいかわからなくて、思いとどまっていたその週の日曜日27日午後5時頃、三木さんから着信がありました

「あ、三木さんからだ!」と思ってとったら、息子さんの声。。

今日の午後1時半に、父は息を引き取りました。お見舞いに来てもらったり、栗生さんにはいろいろお世話になってありがとうございました。とても安らかな寝顔のような顔でした。

という、報せでした。







今日の告別式に行ってきます。

ありがとうございました。



しばしのお別れを

言って来ます。



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團司さん、ありがとうございました。
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